外国為替証拠金取引(FX)とは

外国為替証拠金取引(がいこくかわせしょうこきんとりひき)(FX)とは、 外国為替(がいこくかわせ)の証拠金取引(しょうこきんとりひき)のことです。
この取引で外国為替(がいこくかわせ)というのは、 外国通貨の「両替(りょうがえ)」という意味です (外国為替にはほかに、外国への送金という意味などもあります)。
日本の円から米ドルへ両替する、 米ドルから円へ両替するなどの円を対象とするものだけではなく、 米ドルを豪ドル(オーストラリアドル)に両替する、 豪ドルを米ドルに両替するなどの外国通貨同士の両替も含みます。

証拠金取引(しょうこきんとりひき)というのは、 業者に、少額の証拠金等を出すことにより、 多額の取引を行うことができる取引のことです。
この証拠金の取引は、儲かった時は、 多額の利益がでることになりますが、逆に、 損が出たときは、多額の損害となります。
この特徴を、レバレッジ(てこ)の原理といいますが、 とりあえず、このレバレッジの原理のことだけに限定して設例で説明します。

Aという現在100万円の商品1個を、 1ヶ月後(期限)に必ず売却しなければならないという前提で、 10倍の倍率の証拠金取引で購入を行う場合を考えます (簡単にするため、手数料、消費税等は考えません)。
10倍の倍率の証拠金取引ですので、証拠金10万円を出せば、 現時点で、100万円のAを購入することができます。
仮に、1ヶ月後、Aの値段が上がり、 価格が110万円になっていたとすると、 Aは100万円で購入したAを110万円で売ることができることになり、 (証拠金)10万円で、10万円の利益を得ることができることになります。
しかし、1ヶ月後、Aが90万円になっていたとすると、 Aは、100万円で購入した商品を90万円で、 売却しなければならなくなり、10万円の損害ということになってしまいます。
倍率が大きくなればなるほど、レバレッジ(てこ)の原理が強く働き、 利益も損失もより大きくなります。

また、このような証拠金取引は、 「差金決済取引」(さきんけっさいとりひき)をその内容として含みます。
差金決済取引とは、総代金ではなく、差額分のみで決済を行う取引のことです。
前記のA商品の例で、仮に差額決済取引でなく、 現金の決済で取引を行うとするとAという商品を100万円で、 購入し110万円で売るとすると、決済時、100万円の現金を支払い、 110万円の代金を受け取ることになりますが、 これでは、証拠金取引の意味がありません。
差引金額である10万円のみを受け取ることで、決済を行うのです。

外国為替証拠金取引の場合は、このAという商品が外国通貨ということになります。
つまり、外国為替証拠金取引というのは、外国通貨を商品とする証拠金取引のことです。

損失が発生した場合もレバレッジが働き、 巨額の損失となりかねないこのようなレバレッジによる外国為替証拠金取引の危険性から、 金融庁は、「内閣府令」により、外国為替証拠金取引の取引額の4%以上 (平成22年8月1日から平成23年7月31日までは2%)の証拠金の 預託を受けずに業者等が個人の顧客に外国為替証拠金取引(FX)を 行わせることを禁止しました。
すなわち、平成22年8月1日から平成23年7月31日まではレバレッジの上限50倍、 平成23年8月1日からは、上限25倍となっています。

外国為替証拠金取引(FX)の特徴-バーチャル(相対取引)

外国為替証拠金取引(がいこくかわせしょうこきんとりひき)の特徴としては、 相対取引であることがあげられます。
FXについて説明した本などではこのことをバーチャル(仮想)と表現している本もあります。

先物取引、スワップ取引、オプション取引といういわゆるデリバティブの典型 といわれている取引も通常は、市場で取引が行われます。
たとえば、先物取引が行われる場合は、顧客は、 商品取引員(商品先物市場で取引をする資格)である業者を通じて、 例えば、東京工業品取引所で金の先物取引を行うことになります。

為替取引、つまり、通貨の両替取引を行うのは、「外国為替市場」です。
といっても、この市場は前記の東京工業品取引所のような 実際の建物を持つ具体的な取引上ではなく、 世界中の銀行間のネットワークで行われる概念上の 「インターバンク市場」と呼ばれる市場です。
しかし、銀行以外の外国為替証拠金取引は、 このインターバンク市場とは本質的に無関係です。
外国為替証拠金取引においては、 インターバンク市場におけるその日時の当該商品 (外国為替証拠金取引の場合は二つの通貨の為替レート)の価格を基準 (ただし、このインターバンク市場では確定的に一つの値段に決まるわけではないので、 その業者が任意に選択した基準)に業者と客が一対一で取引 (相対取引:「あいたいとりひき」といいます)が行われることになるのです。

要は、パチンコ屋さんでパチンコを行っているのと同じで、 客が利益を得ればパチンコ屋さんが損失となり、 パチンコ屋さんが利益を得れば客が損失となるというものです。
ただ、パチンコ屋さんと違うのは、その構造がわかりづらいことです。
ほとんどの人は、外国為替証拠金取引について、 その業者を通じ、インターバンク市場で取引を行っていると考えているのではないでしょうか。
外国為替証拠金取引について、 説明している本の中にも直接にはそこまで記載していなくても、 いかにもそのように思わせる記載があるものがあります。
しかし、実際は、その業者と、一対一で取引を行っているのです。

外国為替証拠金取引(FX)の仕組み

上記のように、外国為替証拠金取引(FX)は、 業者と顧客の一対一の相対取引ですので、当事者同士、 実際は業者が定めたルールにより行われることになります。
ただ、銀行間の為替取引などをモデルにして、ほとんどの業者は、 取引の形態を決めていますので、ある程度共通する特徴をまとめます。

証拠金取引

まず、最初にもご説明したとおり、外国為替証拠金取引は、 その名の通り、証拠金取引(証拠金)とされています。

ドルの例で説明すると、1ドル=100円として、50倍の倍率の証拠金取引で取引する場合、 50万円(5000ドル相当の円)を証拠金として預託すると、 5、000ドル×50倍=250,000として、25万ドルの取引が可能となります。

1ドル=100円のときに取引開始して25万ドルを買い、 その後、円安となって1ドル=101円になったとします。 このときの収支は、1ドルあたり 101円-100円=1円 ですから 、25万ドル×5円=125万円の利益になります。

逆に、同じように購入した場合、その後、円高となって1ドル=95円になったとします。 このときの収支は、1ドルあたり 100円-95円=-5円 ですから、 25万ドルでは125万円の損失となります。

なお、これらの例は、税金、業者の実質的な手数料は計算に入れていません。

このように、一般的に外国為替証拠金取引は、 ハイリスク、ハイリターンな取引になっています。 損失が発生した場合もレバレッジが働き、 巨額の損失となりかねないこのようなレバレッジによる 外国為替証拠金取引の危険性から、金融庁は、「内閣府令」により、 外国為替証拠金取引の取引額の4%以上 (平成22年8月1日から平成23年7月31日までは2%)の 証拠金の預託を受けずに業者等が個人の顧客に外国為替証拠金取引(FX)を 行わせることを禁止しました。 すなわち、平成22年8月1日から平成23年7月31日までは レバレッジの上限50倍、平成23年8月1日からは、上限25倍となっています。

ロールオーバー

ロールオーバーとは、決済期限を繰延べることを言います。
外国為替証拠金取引は、銀行間における為替取引に習って、 2営業日に決済されるという形にしている業者が多いです。
ただそれだと2営業日後には買ったものを売り、 売ったものは買って決済しなければならなくなります (もっとも実体は、業者と顧客の相対取引ですのでこう決めているというだけですが)。
そこで、日々の一定の時間に、その時点でのポジションをロールオーバー(繰り延べする) という形式にしていることが多いのです。

具体的には、今月1日午前11時に、1ドルを100円で10万ドル買ったとすると、 2営業日後には売らなければならないという形になります。
ここで、ロールオーバーされると、その時点の値段で売却したことになり、 同時にその値段で買い直したことになります。
例えば、その時の値段が1ドル99円であれば、そのレートで10万ドルを売ったことになり、 1万円の損失が出たことになります。
そして、また新たに99円のレートで10万ドルを買ったことになり、 決済期限が1日繰り延べられたことになります。
このように決済期限を引き延ばすことができると契約しているのです。
ただ、外国為替証拠金の多くの業者は、 ロールオーバーごとに発生した利益・損失を含み損益つまり、 潜在的な損失・利益として、仮の損益として口座の残高には反映させない扱いにしていますが、 最終的に決済すれば、実際の損益となります。

また、ロールオーバーは自動的にされるとしている業者がほとんどです。

スプレッド

外国為替証拠金では、通貨を売買する時、同じ通貨でも、 顧客が売るのと買うのとでは金額が異なります。
例えば、顧客から見て、1ドル100.00円で売れる時であっても、 買う値段は1ドル100.03円になったりします。
この価格差、0.03円(3銭)がスプレッドです。

スプレッドは各外国為替証拠金会社で通貨ごとに異なります。
ある会社では、1ドル100.03円で買えたのに、同じ時間に他の会社では、 100.6円でなければ買えなかったりします。
3銭の差ですが、基本の1万通貨単位で、300円もの差になります。
それも道理で、外国為替証拠金取引は、業者と顧客の相対取引ですので、 極端に言えば、業者は好きな値段で、顧客に売り、 また、顧客から買うことができます。
このように、スプレッドは、業者の利益つまり、実質の手数料といえるものです。

スワップ金利

外国為替証拠金取引のバーチャルな特徴を一番表していると 考えられるのがスワップ金利です。
顧客と業者の相対取引ですので、業者は法律に反しない限り、 どんなルールでも定めることができます。
ですので、本来、スワップ金利など定める必要はないはずです。
ただ、ほとんどすべての業者が、このスワップ金利を定めています。

これは、外国為替証拠金取引(FX)のそもそもの沿革から生じたのです。
日本では、外国為替公認銀行以外が外国為替業務を行うことを長く禁じていましたが、 平成10年(1998年)4月に施行されたいわゆる外為法により、 この規制がなくなりました。
これにより、個人の顧客相手の外国為替証拠金取引が生まれたのです。
この時、モデルとなったのが、従前からの銀行による外国為替取引です。
この銀行による外国為替取引にスワップ金利がありました。

例えば、Eが、銀行に行って、1年後に1万ドルを円に替える 両替を予約したとします(為替予約(かわせよやく))と言います。
すると、銀行は、この為替予約を行うために、つぎのような取引を組み合わせます。

まず、銀行は、現時点で円相場を確定させるために、 外国為替市場で、1万ドルを円に交換してしまうのです。
これは現時点での交換ですから,直物(現物のことです) 円相場が適用されます(ここでは仮に1ドル=100円とします)。

しかし、Eは一年後に1万ドルを支払って、 その分の円を受け取る取引を依頼しているのですから、 今銀行が外国為替市場で売ったドルはどこにあったのかということになります。
じつは、ドルを一年間貸し借りする金融市場から、 銀行が1万ドルを借りて、それを売ったのです。
Eがドルを売りたいのは一年後でしたから、銀行としては, この1万ドルは一年間借りたままにしておく必要があります。

銀行は、1万ドルのドルを売ると、その代価として100万円の円を手に入れますが、 それをEが受け取りたいと考えているのは一年後ですので、 銀行としては、その100万円を1年間金融市場で運用できます。
この取引の組み合わせによって、Eが取引を依頼した銀行は, 1年間だけ金融市場からドルを借りて, かつ金融市場で円を1年間運用するのですが、 ドルを借りる際にはドルの金利を支払い、 円を運用する際には円の金利を受け取ることになります。
ドルの金利2%、円の金利を0.5%とすると、 差し引きで1.5%の金利を支払えばいいことになります。
この金利の支払いが、Eが依頼した外国為替の取引にともなって生じたコストですから、 銀行は,この金利支払い分をEに請求します。
この金利の支払い部分がスワップ金利ということになります。

外国為替証拠金取引で、1ドル=100円のレートの際に、 1万ドルを売却した場合は上記の理屈で、市場から1万ドルを借り、 100万円を運用することになりますので、 ドルの金利2%、円の金利を0.5%とすると、 差し引きで1.5%の金利を顧客は業者に支払わなくてはならないことになります。
逆に1ドル=100円のレートの際に、1万ドルを購入した場合は上記の理屈で、 市場から100万円を借りて、1万ドルを運用することになりますので、 ドルの金利2%、円の金利を0.5%とすると、 差し引きで1.5%の金利を顧客は業者からもらえることになります。

むろん、外国為替証拠金取引の場合は、実際に業者が、 ドルや円を運用するわけではなく、そう考えるというだけのことです。

ロスカット

ロスカットとは、強制決済のことで、外国為替証拠金取引で大きな含み損が 出た場合に強制的に取引が決済されるルールのことです。

例えば、50万円を証拠金として預けて、10万ドルを購入したとします。
もし、円が5円円高に進めば、50万円の損失になり、 証拠金と相殺するとゼロになってしまいます。
さらに5円以上の円高が生じたら、損失となってしまいます。
業者の側から見ると、証拠金という担保よりも損失が大きくなり、 顧客にその損失を支払ってもらえなくなるかもしれません。

そこで、ほとんどの業者で含み損が一定のレベルに達すると強制的に 取引を終了させるルールを導入しています。

しかし、このロスカット・ルールがシステム上のトラブル等から機能せず、 問題となることもよくあります。
このロスカット・ルールがコンピューターシステムの問題から、 ルールどおり適用されず、顧客が損害を被った事案について、 東京地方裁判所平成20年7月16日判決(金融法務事情1871号51頁以下)は、 システム上のトラブルからロスカット・ルールが機能しなかったケースについて、
(1) 外国為替証拠金取引業者が、外国為替証拠金取引において、 顧客に対し、ロスカット・ルールを示していた場合には、 当該業者は、当該取引において、ロスカット・ルールに従った手続きを取るべき義務を負う。
(2) 当該業者が、自らのコンピューターシステムが不充分であったことにより、 当該時点で即時に当該顧客の建玉についての反対売買の成立を遅延させ、 その結果、当該顧客が損害を受けたときには、当該業者は、 当該取引における注意義務に違反したものとして、当該顧客に対する不法行為責任を負う
として、原告顧客の請求をおおむね認めています。
たたし、当該判決は、法人顧客にはほとんど適用されない消費者契約法を その理由の一部としていますし、当該事案との関係もあり、 どのような場合に業者が責任を負うかは、事案によって、異なる点も多いと考えられます。

外国為替証拠金取引(FX)の危険性

日本では、外国為替公認銀行以外が外国為替業務を行うことは 禁じられていましたが、平成10年4月1日から、 施行された改正外為法により外国為替業務につき許可制・届出制が廃止され、 誰でも、外国為替業務を行うことができるようになり、 外国為替証拠金取引を行う業者が生まれました。
しかし、これらの業者を規制する法律が全くありませんでした。
このため、従前の他の悪質商法を行っていた業者も多数、外国為替証拠金取引に参入しました。
このことにより多数の被害者が生じ、紛争が多発する事態となりました。

平成17年7月1日に改正金融先物取引法が施行され、 外国為替証拠金取引は全面的に同法の規制対象となり、 現在は平成18年6月1日成立の金融商品取引法に引き継がれ同法の規制対等となりました。
前記金融先物取引法は、外国為替証拠金取引等の金融先物取引業者の 登録制を採用したことから(同法56条。金融商品取引法になってからは、同法29条)、 悪質業者が多数含まれていた独立系外国為替証拠金取引業者の多くが 平成17年末までに消滅し、被害件数は顕著に低下していきました。

現在の外国為替証拠金取引の危険性としては、 やはり、外国為替証拠金取引とは名ばかりで無登録の違法業者が行っている詐欺的取引です。
危ないと思ったら最低限でも、金融庁の登録番号を聞き、 金融庁のHP の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確認されるべきでしょう。

現在、顕在化している問題は、システムトラブルの問題です。
システムが正常であるか、恣意的に運用されていないかについては、 外部からわかりにくいこともあって、相談レベルでも苦情が多いものです。

典型的なシステムトラブルとしては、ロスカット(強制的な取引の終了) がおこなわれなかったというものがあります。
このロスカット・ルールがコンピューターシステムの問題から、 ルールどおり適用されず、顧客が損害を被った事案について、 東京地方裁判所平成20年7月16日判決(金融法務事情1871号51頁以下)は、
(1) 外国為替証拠金取引業者が、外国為替証拠金取引において、 顧客に対し、ロスカット・ルールを示していた場合には、 当該業者は、当該取引において、ロスカット・ルールに従った手続きを取るべき義務を負う。
(2) 当該業者が、自らのコンピューターシステムが不充分であったことにより、 当該時点で即時に当該顧客の建玉についての反対売買の成立を遅延させ、 その結果、当該顧客が損害を受けたときには、当該業者は、 当該取引における注意義務に違反したものとして、当該顧客に対する不法行為責任を負う
として、原告顧客の請求をおおむね認めています。
たたし、当該判決は、法人顧客にはほとんど適用されない消費者契約法を その理由の一部としていますし、当該事案との関係もあり、 どのような場合に業者が責任を負うかは、事案によって、異なる点も多いと考えられます。

また、外国為替証拠金取引は、業者と顧客の一対一の相対取引 (あいたいとりひき)ですので、市場における取引に比べ、より、 どういう業者と取引を行うかが重要です。
いかに口座上は、利益が上がっているとしても、当該業者が倒産すれば、 証拠金として出していた部分も含め全額損害となります。
平成21年(2009年)から22年(2010年)にかけて、業者の倒産により、 現実にこのような損害が発生しています。
業者によっては、信託分離保管で顧客から預かった資金全額を信託会社などに 預け入れ会社の資産とは完全に別のシステムを取っていると標榜する会社もあるが、 実体がそうであるかは、外見上はわかりません。
東京地方裁判所平成22年4月19日判決(判例タイムズ1335号189頁以下)は、 外国為替証拠金取引業者が関連会社である会社から十分な証拠金の預託を 受けずに同会社との間で外国為替証拠金取引を行い、これにより、 当該業者が他の顧客に対し証拠金を返還できなくなったことについて、 当該業者及び当該関連会社の名目的取締役等に会社法429条1項に基づく責任を認めています。

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