オプション取引の具体例
コールオプション、プットオプションそれぞれ具体例で説明しましょう。
A(買い主)がB(売り主)と、オプション取引を行い、
「X社の株式を1年後に、1株1000円で1000株買うことができる権利(コール・オプション)」を、
対価10万円を支払って、購入したとします。
【A(買い主)から見た場合】
ア 1年後、X社の株価が1200円になったとします。
Aは、Bに対し、上記の権利を行使することにより、X社の株式1000株を、1000円×1000株、
つまり、100万円で購入することができます。
そして、これを市場で、1株1200円で売却することができます。
この取引によりAは
(1200円×1000株-10万円(オプションの対価))-1000円×1000株=10万円
の利益が上げられることになります。
イ 1年後、X社の株価が800円となった場合は、
オプションを行使して1株1000円で1000株を買っても意味がありません。
この場合は、Aはオプションを放棄することになります。この場合は、対価10万円が損失となります。
【B(売り主)から見た場合】
ア 上記アの場合、Aの利益10万円がBの損失となります。
イ 上記イの場合、オプション代価である10万円がBの利益となります。
結局、1年後、株価が1株1000円を越える場合は、Aはオプションを行使し、利益を得ることになりますが、
そのAの利益-10万円(オプションの代価)がBの利益(前記の計算でAに結局損失がある場合)
あるい損失(前記の計算でAに利益がある場合)となります。
逆に、株価が1000円以下の場合は、Aはオプションを行使しないため、
オプションの代価10万円がAの損失、逆にBにとっては利益となります。
次に、プットオプションですが、A(買い主)がB(売り主)と、オプション取引を行い、 「X社の株式を1年後に、1株1000円で1000株売ることができる権利(プット・オプション)」を、 対価10万円を支払って、購入したとします。
【A(買い主)から見た場合】
(1) 1年後、X社の株価が800円になったとします。
この場合、Aは、X社の株式を800円×1000株=80万円で、株式市場から購入し、
さらに、Aは、Bに対し、上記の権利を行使することにより、X社の株式1000株を、1000円×1000株、
つまり、100万円で売却することができます。
この取引によりAは
(1000円×1000株)-(800円×1000株)-10万円(オプションの単価)=10万円
の利益が上げられることになります。
(2) 1年後、X社の株価が1200円となった場合は、
オプションを行使して1株1000円で1000株をBに売っても意味がありません。
この場合は、Aはオプションを放棄することになります。この場合は、対価10万円が損失となります。
【B(売り主)から見た場合】
(1) 上記(1)の場合、Aの利益10万円がBの損失となります。
(2) 上記(2)の場合、オプション代価である10万円がBの利益となります。
結局、1年後、株価が1株1000円以下の場合は、Aはオプションを行使し、
利益を得ることになりますが、
そのAの利益-10万円(オプションの代価)がBの利益(前記の計算でAに結局損失がある場合)あるいは
損失(前記の計算でAに利益がある場合)となります。
逆に、株価が1000円を越える場合は、Aはオプションを行使しないため、オプションの代価10万円がAの損失、
逆にBにとっては利益となります。
2 オプション取引は、権利行使価格や満期日などの条件をかなり自由に設定できる点、
いろいろな条件のオプションを組み合わせることで、自在な損益パターンを描くことができる点などで、
様々な金融商品で使われます。
銀行、証券会社から、企業が購入しているオプション取引のには、
相互にオプションを売りあい、条件(為替レート等)により、
どちらが行使できるかが決まっているというような形のオプション取引もあります。
オプション取引が表面にでない形でも、例えば、デリバティブ取引を組み込んだ公共債、
社債(以下「公社債」といいます)などのいわゆる仕組債の多くは、
オプション取引の売りが組み込まれています。
というのは、オプションの売りは、決まった対価(プレミアム)が最初に入ることから、
これを組み込むことにより、高率の利息の支払いなどを約束できることになるからです。
しかし、他方、前記のとおり、オプションの売りは、損失が無限定ですから、
これらの公社債においては、これを打ち消すための取引を組み込むことになりますが、
それは当然、価格、条件等で、これらの公社債の購入者の負担になるような形になります。
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オプション取引の歴史
1 オプションと思われる取引は、古くからあったようです。
(1) 古代ギリシャ時代、アリストテレスの「ポリティクス(政治学)」によると、
学問の無力を非難されたターレスは天文学の知識を用い、冬の間に翌年のオリーブの豊作を予見し、
わずかな金でオリーブ圧縮機借用の権利を買い取りました。
翌年は予想通りオリーブは豊作で、その結果、彼は自分の好きな価格でその権利を転売したということです。
(2) 17世紀のオランダでは、チューリップの球根が大変高値で取引されていました
(いわゆる「チューリップ・バブル」)。
チューリップの卸売り業者は貴族などに先物でチューリップを売っていたが、
受け渡し時の仕入れ価格がどうなるか分からないので、これは非常にリスクの高い取引であった。
そこで、卸売り業者は、チューリップ栽培者から購入する権利をオプションとして設定しました。
これにより、チューリップの値段が高騰すれば、卸売業者はオプションを実行し、価格が下落すれば、
市場で購入し引き渡しました。
しかし、昭和46年(1971年8月15日)、当時のアメリカのニクソン大統領は
「今後、ドルと金の交換に応じない」と声明を出しました。
これがいわゆる「ニクソン・ショック」です。
2 アメリカにおいての現代のオプション取引の始まりは、
昭和48年(1973年)4月にCBOE(シカゴオプション取引所:Chicago Board Options Exchange)が16の株式の
コール・オプションを上場したことに始まるとされています。
昭和50年(1975年)以降アメリカン・ストックなどの他の取引所もオプションを扱うようになりました。
昭和52年(1977年)3月から、CBOE(シカゴオプション取引所)でのプット・オプションの取引が始まりました。
昭和57年(1982年)には、米国財務省証券が上場され、初めて債券を対象とする上場オプション取引が開始されました。
※参考
小林靖弘・清水正俊著「スワップ取引〔増補版〕」有斐閣 1986年
野口悠紀雄著「金融工学、こんなに面白い」文春新書
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